実家のドアは、いつも開いている。おとんの言葉と、おかんのおにぎり。

京都精華大学でのコミュニケーション授業が終わって、そのまま電車に飛び乗る。
向かうは、久しぶりの実家、兵庫県の川西。
実家の玄関に着くと、いつもドアが開いてる。
これ、いつもそう。だからピンポーンってしたことがない。
昼間だろうが夜中だろうが、開いている。
両親ともに奄美大島出身だから?
「鍵?なんでするん?」くらいのノリなのか?
って思ったというか、いままでそれが当たり前と思っていて何も疑問に思っていなかった。(※ワタリも生まれは奄美大島だからなのか?)
もしかしたら、ワタリがいつ帰ってきてもええように、開けてくれてるのかもしれない。
…うん、たぶん(笑)。今度聞いてみよう。

家に入ると、おかんが「はい、おかえり〜」といい、親父は黙っている。
「ただいま!」というと「・・おう!」という。
これがワタリ家のいつもの風景。(※弟はたいがい部屋)

「何が食べたい?」と言われたので事前に「おかんのラーメン」と答えていた。
おかんのラーメンはかなりオリジナリティ溢れるラーメン。
太麺にスペアリブがついてるのよ。これが普通だったのよ。でもいまはわかる。そのラーメンはここでしか食べられない。
ラーメンを堪能して、最近の近況報告をしたりされたりの時間。
夜も更けたころ、おとんが最近会った人の話をポツリポツリとしてて、ふと、いったセリフ。

「あいつはな、お喋りがうまい。だから、嘘が多いんや」

その言葉が、妙にストンと胸に落ちてきて、ぐっときた。
長年、いろんな人を見て、関わって、その裏側まで見つめてきた人間の、深みのある言葉のような気がした。ペラペラと口先だけで調子のええことを言う人間の本質を見抜いてるような、そんな鋭さがあった。
お喋りがうまいことと、正直であることは、必ずしもイコールじゃない。
お喋りで、かつ心を込められる人もいる。
でもここで言ってるのは、お喋りを武器に心を隠してしまってる人のことだ。
都合のいいように話を盛ったり、隠したりすることができてしまう。
そんな人間の機微を、おとんは長い人生経験の中で掴んできたんやろうな。
そんなことを思った。そのときは「おお・・そうか」くらいしか反応してなかったけど。

次の日の朝。帰り支度をしつつ、いつも旅先で使っている小さいお弁当箱をもっておかんに
「おにぎり握ってくれへん?」と頼んだ。
「ええよ。卵焼きもしとこか?」
「うん!」
新幹線でお弁当をあけた。


何気に頼んだけど、最後に作ってもらったのは高校卒業して家出てからだから…え、これもしかして28年ぶりの・・お弁当!!
うまいだけじゃなく心に沁みる味でした。

実家には、年に何回も帰れるわけじゃない。
「桜って、あと何回見れるんやろ?」って考えることがあるけど、それと同じく、おとんやおかんと、こうやって顔合わせて話せる時間も、決して無限じゃない。
おとんがポツリと漏らした、人生の真理みたいな言葉。
おかんが握ってくれた、懐かしくて優しい味。
こういう、なんでもないようで、ものすごく大切なものを、ちゃんと心に刻んでおきたい。忘れたくないな、と思う。
さて、また明日から頑張ろう。そんなことを思った、久しぶりの帰省でした。

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