キース・ジョンストンについて。ワタリが覚えていたり語りたいことを自分のために書いておこう。

2023年3月11日(土)。インプロの父、キース・ジョンストンが亡くなった。

その一報が入ってきたとき、ワタリは広島のマツダスタジアムの隣にあるコストコにいて、自分でもびっくりするくらいショックを受けていた。

それは数日前から「改めてキースってどんな経緯でルースムースを立ち上げて、今はどんな感じで運営しているんだ?」と気になり、じっさいにカナダにいった人に「今度ルースムースについて教えてほしい」と打診していたり、キースのショーのフォーマットに詳しい人に話を聞くということをTODOに書いていたりしたからこそ、余計にショックを受けたのかもしれない。

とはいえ、20年前に数回、時間にして20時間もないくらいの時間しか直接会っていない。だからキースのマインドを継承するとか、意思を受けつぐなんてことは言えないし、言う資格もない。それはもうひたすらに彼とともにいた人たちにお願いしたい。とはいえ、ワタリにとってとっっっても大きい影響があったこの人のことを他ならぬ自分自身が刻んでいたいという想いと、感謝の意を残しておきたいというこれまた勝手な想いでPCに向かってキーボードをポチポチしている。

キースに直接逢ったのは20代前半だったと思う。

「でかっ」っていうのが最初の印象。

そしてその後、キースのワークで体験してる中でずっと思っていたのは「この人・・本当に言ってる」っていうことだった。
英語だし今井純さんが通訳しているのだけど、この本物感はワタリの中でものすごいことだった。

「失敗していい」などの即興でよく語られることが、彼の口から出たときに絵空事ではなくなる。開発した人、体現している人の力がそこにあった。

「山・川、海、キース」くらいの自然物だと感じた。

「もし私が教えていることが障害になるのだったらば、すぐに忘れてください。そしたらあなた達は発明することができる。私はインプロを創ったとき、アメリカですでにインプロがあることを知らなかった。それはラッキーでした」

ワークで語ったこの言葉はその後20年以上たった今も鮮明に思い出せる。

世界的権威でありながらこれを言うことはすごいことだと思った。

また「インプロをどうすれば教えられるのか、まだわかっていません。他の誰かを呼べばよかったけど、そうはいきませんでした。」

「(ステージに出たプレイヤーに)あなたは健康ですか?元気ですか?マジで聞いていますけど」など

いちいち生感がワークにあった。たくさんの学びがあった。

静かでシンプル。そしてでかい。

集中ワークの終盤「実際にショーをするようにやってみてください。たぶん好きじゃないと思うけどw」と言うキースの前で、ワタリともうひとり誰か(忘れてしまった)と2人で即興をやる機会があった。

ワタリがMCで「いやぁ、世界的権威の前でやれるなんてものすごい幸せなことですよ!・・めっちゃ意識しますよね!とにかく認めてほしい!w」なんて言ったことに対して「僕をいじるのはとても良いことだと思う。皆、それが好きそうだったね」といったり、実際のワタリたちのプレイにたいして「今のシーンにアドバイスがあるとしたら、会話が多かったから、あとは『do it』といいます。実際に行動してみてください」と言って、軽くディレクションしてくれたりもした。

その後、今井純氏がキースの本を出すときにお手伝いとして何度も何度も録音したやつを書き起こしたりしたのもあって、かなり身体に沁み込んでいる。

自分のワークでも相当にコピーをした。

疑いながら実践で試した。

今でもワークの中で「あ、、キースが言ってたことはこういうことだったんだな」なんて合点がいくこともある。

「シアタースポーツをつくったとき、これで世界が平和になると思った。そうはならなかったけどね」なんて言葉も思い出す。

キースの考えるゲームやフォーマットには、いつもプレイヤーに自由と挑戦を与えてくれる工夫があった。

書いていくと色々記憶が蘇る。
キースワークの中でよくバルーンを使っていた。
ふくらませるときに「しっかり縛ったらダメなんだ。後でまた使いたいし、叩いた時に解けて風船が飛んで行くのも面白い」と言いながら縛り方を教えてくれた。そのときにキース自体が風船をうまく縛れないときがあって、そのときにブツブツなにかをつぶやいていた。数字をカウントしていた。(もしかしたら計算していたのかもしれない)その理由は「やろうとすると意識してしまって余計にうまくいかない。身体はもう縛り方をしっているはずだから、意識をよそにやるために頭の中を忙しくしていた」と言った。マジで実践するやん。すぐに。面白いおっちゃんやな~!と感動した。

日本の映画、とくに黒澤映画についても語ってくれていたり、志村喬や三船敏郎の話がでるたびに大好きなワタリがワクワクした。

「ポジティブ、ネガティブっていう言葉は適切じゃない。きっと日本語のほうが当てはまる言葉があると思う。アイディアを進ませているのか阻害しているのかということなんだけどね」これも心に残っている。

この偉大な発明家のおかげで、ワタリは即興コメディがいまでも大好きだし、いまでも探求の旅は続いている。

先人の残してくれたものをもっと味わいつつ、それをさらに進める一粒の何かになれたらと願いながら今を目一杯楽しみつくそうと思います。

キース、本当にありがとう。あなたと出逢えたことでワタリの即興人生はものすごく面白くなってます。

純さんfacebookの写真拝借しました。ワタリが写ってる写真をあげてくれてありがとうございます。
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