「ワタリ、吉祥寺でよく行く飲み屋があってさ。カッパってお店なんだけどそこで即興やりたいんだよ」
「うん」
「で、最初はやはりワタリじゃないとって思ってんだわ」
「おお。うん」
「その後はいろんな人ともやっていけるようにしたんだよね」
そんな話しをしたのが3年前。コロナがくる少し前だったかもしれない。
電話のあと、すぐにお店に下見にいってみた。
お店にはいったらすぐにコの字のカウンター。そこにびっしりと人が座り、美味しい料理とお酒を楽しんでいた。
「え?どこでやるの?」
「中だよ」
「なか?」
「厨房で」
どうやったらここで即興ができるのか?呑みながら山本と話ししたが気がついたら家だった。記憶なくなるまで飲んではいけない。
とにかく楽しく美味しいお店。カッパの最初の印象だった。
日程を決めた。しかしすぐにコロナがきた。
「ワタリ、どう?むずいかな?」
「飲食店はね・・こりゃしばらくはむずいかもしれん」
「そうか~いやね、カッパの社長がさ、もう暖簾つくったんだ」
「え?」
「『カッパ劇場』っていうやつ」
「すげぇ!でもムズイわまだ」
「そうか~わかった」
そこから1年経って、また山本から電話。
「ワタリ、どう?まだやれない?」
「んんんん~まだねぇ。ロクディムもかなり慎重になってるからねぇ」
「そうか~わかった」
で、また1年。
少し落ち着いてきたから、ひとまずお店にいこうということに。
お店で社長のゆうすけさん(あっという間にゆうちゃんって呼ぶようになるほど気さく)と喋る。
そしてそこでまた記憶なくなるほど呑む。楽しすぎるお店だ。
そして今年。
「ねぇ。まだやれねん?」
「いや、やれる」
「お!じゃあやろう」
山本は絶対に諦めなかった。
2023年4月2日。
3年ごしの想いがかなってお店に「カッパ劇場」の暖簾がかかった。

お店にはいったら山本は緊張していた。
「あ~なんでやるんだろ」
台本がない。武器になるもの頼るものはない。そわそわがマックスになっていた。
店内をみて、厨房にはいって、いろいろ確認する。
社長のゆうちゃんはずっとニヤニヤしていた。お祭りがはじまるワクワクが溢れていた。
開場から本番までは1時間。
開場と同時くらいにぞろぞろとお客さん。
昼間だけどお酒を頼む人がけっこういた。楽しむ気迫を感じて嬉しくなる。
昼間も夜も満席。ゆうちゃんががっつり常連さんに声をかけてくれていた。
昼間は渡辺哲さんも観に来て、本番中に突然絡ませてもらったらしっかりと芝居で返してくれた。芸能人に疎いワタリでもわかる素敵な俳優さんの返しにミーハーな気持ちになってしまうほど嬉しかった。
昼の回、終わってもギリギリまで皆残ってお酒を呑んで「面白かった~!」「毎月やってほしい」など盛り上がった。

夜の回は昼間よりもお客さんが入り立ち見の人もいる中で開催。
山本もいろいろ考えていて「ここにあるモノになって即興やってみたい」という提案から、ワタリがモノの声をやり、山本は人間でモノに関わるという芝居も立ち上がる。


夜も大変盛り上がった。
皆がお酒を呑んで語らって終わったあとも語り合って盛り上がる。コロナの前の時代のような感覚になったのは、コロナの前から強くやりたい!って願った山本とゆうちゃんの想いがそうさせたのかもしれない。

「台本がないと役者は本番ができない。でもお笑い芸人さんは毎日舞台に立ってたりする。その差は本当にすごいとおもう。でも、即興であれば、もちろんトレーニングは必要だけど、こうやって本番を経験することができる。だからもっとやっていきたいんです」
本番後に山本がお客さんに語った言葉。
「カッパ劇場」これからも開催していくとおもうのでぜひにきてね。


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