2024年1月6日。
ワタリはゴローに行きました。
ゴロー?知ってるでしょ?あのゴローだよ。
「こぉどもが〜!食べてる途中でしょうがぁ〜!」
のゴローさんじゃなく!
巣鴨で何十年も最高の登山靴を出しているゴローですよ!
もう一年以上「あぁこういうこだわりのお店・・好きだわ〜」と恋焦がれていたお店です。
しかし、登山初心者のワタリにとっては高嶺の花。
お店に入った瞬間に「(チラッとみて)あぁ、格好から入る人はお断りしてるんだよね」とか「重心が整ってない人にはうちの靴は履かせられないなぁ」とか「なんで登山するの?って聞かれて『そこに山があるから』以外の答えを言ってみて」とか言われるかもしれない・・というネジ曲がった妄想のせいで足が巣鴨のほうに一歩もでませんでした。
いやそもそも登山?したいの?ってね。ワタリも思う。
25歳のときにアトピーで入院してから体質が「体温があがると蕁麻疹がでる」という、「怒ったらハルクになる」のと同じくらいのオモシロ体質に変わった(見た目もハルクみたいに大きくなる)ワタリだから、登山なんてね、もっての他なんですよ本当は。
それでも去年なんとか行きたいっていって、友達に棒ノ折山に連れていってもらった登ったことがあるんだけど、10分おきくらいに蕁麻疹が出てないかチェックしてたからね。景色を見るんじゃなく、自分の顔見てたから。どんな趣味なんだよね。趣味は「山登りしながら変化する自分の顔を観ることです」って。
なので、本当に向いてない。そんなワタリがなぜ登山靴なのか?
登山ももちろん興味はあるんです。それとキャンプもしたいんです。また野営なんてのもしたいんです。あと自転車旅も。そんなワタリのアウトドアへの欲求がネジ曲がったことと「タケシ、道具はな、一生モノがええぞ」とじいちゃんに縁側で言われたからです。嘘です。
じいちゃんのところは嘘だけど、そういう欲求があって「自分の旅にお供できる靴がほしい」となり、それ欲が2023年の暮れに爆発しまして、勇気をもってゴローに電話をし、予約したのが1月5日。
そして人生で初めての巣鴨に降り立ったのが1月6日なのでございます。
巣鴨。まさかじゃっかん緊張して降り立つと思いませんでした。
歩いてゴローに向かう。15分くらい早くついてしまい、お店に入っても良いんだろうけど「時間が早けりゃいいってもんじゃないよ!」って入り口で言われたら速攻で巣鴨を後にしそうだと思ったので周辺をウォーキング・デッドのウォーカーのごとくウロウロする。
自分でもおかしいと思う。なんでこんなにビビるのか?職人に対して何かこうあるんだね。1mmでもズレたら大声で怒られるっていう謎の刷り込みが。だから頑固おやじのラーメン屋なんかぜったいにいけない。できるだけズレがないように配慮する。したい!
なので15分くらいウォーカーやって約束の20秒前になって、ようやっとドアを開けました。
「はい。いらっしゃいませ〜」
お店のおばさまの実にハキハキとした声。知ってる。YouTubeでも出てた人だ。
「ヴア」ウォーカー時間が長すぎて「ヴア」と出た。でもそこは持ち前の即興力で「ヴア予約したワタリと申します」と完全なる真顔で伝えると「はい、二階にあがってくださいね〜」と案内された。
YouTubeではおばさまが足の採寸やオーダーメイドの要望を聞いたりしていた。だからてっきりおばさまが担当してくれるのかと思ったら違ったようだ。
案内されるまま二階への階段を上がっていく。
上がり切るとゴローの靴に囲まれる贅沢が現れた。その空間の真ん中にベンチのような椅子。
「はい、ではそこに荷物もおいてくださいね。で、足を測りますんで裸足になってください」
声の方向を向くとおじさまが立っていた。
もう間違いなく職人さん。この人が!直々に!なんてこった!
なんて書いてたらそもそも「ゴロー」って誰のことなんだろう?と気になって調べた。
登山靴「ゴロー」、キャリア60年超の靴職人が引退した理由(前編)|世界名品漫遊記(第20回)
店主(コロナ禍でお店を守るために引退)のお父さんの名前だった。
とかくワタリを担当してくれるのはゴローさんではないが、ゴローをつくっている職人さんであることは間違いない。
ドキドキしつつ、裸足になる。
板の上に足の形が描かれた紙が敷かれ「この上に立ってください」と言われるがままに立つ。
自分の足を測られる経験。あまりにも新鮮。これはブログの読者に伝えたい。
あぁ・・写真撮りたい。
おそるおそる「あの・・すいません、これって写真撮っても」と伝えるとおじさまが「・・最後に紙をお渡ししますので」と言われる。
「お前はお前の仕事をするんだよ。写真じゃねぇだろ。いまは紙の上に立つ。まっすぐにな!」
ワタリの脳の勝手な翻訳に震えつつ、まっすぐに立った。
淡々とワタリの足を型取りつつ、おじさまはまるで医者のようにワタリの足の状態を伝えてくれる。
普段履いてる靴がゆるゆるだから足とズレが起きている。
そのため足の指が無意識に踏ん張ってしまっている。それで指が曲がっているのが通常になっている。
足の指が曲がることによって本来だと地面につかない部分がついてしまう。だからそこにタコができている。
その癖によって指の下の部分が広がってしまっている。
あなたの本当のサイズは25.5だけど、それだと窮屈に感じてしまってもう少し大きいサイズの靴を選んでしまっている。
え?25.5??
ワタリ、今まで靴を買うときや衣装さんに靴のサイズを言う時は「26か26.5です」と答えていた。実際も26.5の靴を履いている。え?25.5?
「少し窮屈に感じるかもしれないけど、ここの部分は大丈夫なんです。そして履いていれば靴が合うからメーカーによってサイズ感違うけど基本的には25.5の靴がジャストです」
これが本当に、衝撃、だった。
自分の足のサイズを今の今までずっと間違っていたという事実。
そういえば身長みたいに足のサイズって測った記憶がない。
なんとなく、だ。なんとなく「キツイからもう少し大きいやつ」という感覚で決めていた。
正確なサイズが自分が思っているよりも小さいという。しかも1センチも。
それが自分の癖によって勘違いが起きていたという。そしてその癖は靴紐をちゃんと結んでいないことから起きていたという。
じゃあなんで靴紐を緩くしていたか?っていうと、脱ぐのか楽っていうのもあるんだけど、もう1つ理由があって、昔読んだ本に「マイケル・ジョーダンは靴のスペックに依存しない。身体の軸がしっかりしているから」みたいなくだりがあって、それをどう勘違いしたのか、「靴を緩くはく」っていうふうに理解が転じてて、それ以降あまり靴紐をきつく締めないっていうのが基本になっていたんですね。もう自分にびっくりしてる。なんかアホすぎる。
「なので靴紐はものすごい大事なんですね。しっかり締めてあげることで、足の負担も減る。靴にも優しい。足と靴がずれるとその摩擦で靴も早く駄目になっちゃいますからね」
もうお医者さんやん。すごい。。
おじさまの話はその後も淀みなく進んでいく。
締めすぎると血流が悪くなるという話があるけど、歩いて入る分には全く問題ない。
長時間動かないんであればその時は緩めてあげる。締めることが正義ではなく、その時その時で判断していく。メリハリが大事。
靴は温かいか寒いかでなく、緩いかどうかで判断してください。
自分の体重を常に支えている足だからこそ大事に。
ゴローマインドが沁み渡る。
計測が終わり、ワタリが欲しかった「ブーティエル」を出してもらい、履く。
「実際に歩いてくださいね。階段降りたり登ったりもしてみてください。違和感があったら言ってください」
しっかりと靴紐を締めた状態での登山靴の安定感を感じつつ、店内をウロウロし、階段の上り下りを繰り返す。
そしたらさらに中敷きをもってきてくれた。
「これを入れることであなたの足の癖はもっとなくなっていくんだけど、それが違和感って人もいるから。まずは試しに使ってみてください」
中敷きバージョンも試す。なるほど全然違う。しかしワタリは少し違和感を感じた。
「これは後でも買えますから。オススメはこれです」と詳しく教えてもらう。
また、ワタリの左右の足は違いがあまりない(人によっては大きくサイズが違ったりする)ので、通常のサイズの靴で大丈夫とのこと。そして歩き方も左右はそんなに違いがないとのこと。
ということで、ブーティエルを買うことに!登山靴だから1センチを大きめの26.5!
「かかとに少しタコがあるからそれが擦れてしまうかもなので、少しだけ調整しますね」
そういうとおじさまは漫画で虫歯を抜くときに出てくる器具の巨大バージョンを持ってきて靴のかかとの部分をムギュムギュと調整しはじめた。(ゴローのオリジナル器具)
ワタリの足に合った靴が生まれる瞬間にも立ち会えてホクホクする。
最後の衝撃はこれらの計測やお話やじゃっかんの調整が無料だったこと。オーダーメイド扱いじゃないんだ!これ!なんてリーズナブルなんでしょうか。しかもオーダーメイドしても3000円強くらいなので、どのみちすごいリーズナブルなんだよ。もう親切の塊。
ということで!ワタリ!びっくりするくらい初心者なくせに!ゴローの靴を手に入れました!!!!
帰って、防水のオイル塗りこんで、1日乾かしての〜
近所を試し履き。
あ〜最高です。もう最&高です。
お会計のとき、おじさまが両手を顔の横まで上げてニギニギしながら
「是非。色々、手をかけてあげてください」と笑顔で言ってくれた。
はい!これからたくさん履き込んでいこうと思います!ありがとうございました!
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