先日、タリーズで1人コーヒーを飲んでいた時のこと。
パソコンに向かっていろいろ書いていたら、隣のテーブルに初老の男3人組が座ってきた。
3人ともニコニコしていた。
1人がカウンターに行ってコーヒーを3人分買ってきた。
その時、テーブルで待っていた2人に対して
おじさんA「おいっ。あの子。まどかっていうんだって。かわいいね」
とカウンターで働いている子の方を向く。
残りの2人が中腰でカウンターの方を見る。
おじさんA「あ、いまちょうど見えないや。あとで見てこいよ。まどかって言う名前だから」
どういうことなのか?と気をとられつつ、パソコンに向かって作業を続けるワタリ。
おじさんA「あ、いたいた。おい。行ってみようよ」
3人はカウンターで働いている「まどか」に首ったけになっている。
なぜ「まどか」にこんなに反応するのか?謎がすごい。いかん、作業に集中集中。
しばらくやり取りしていた3人組が、結局全員カウンター移動。
すごいな。まどか大人気だ。
向こうで話し声が聞こえる。いや聞こえるのはおじさん達の声。声が大きいんだ。
おじさんA「あのね、こいつの娘もね!まどかって言うの!同じ漢字だよ!かわいいね!」
なるほど、娘と同じ名前だったのか!謎が解ける。いや、そうでもないか。テンションが高すぎる気も。
ワイワイと帰ってくる3人。
おじさんA「いやぁ可愛かったね」
おじさんB「でも向こうは迷惑っぽかったな」
おじさんA「いや、もう年取るとさ。向こうのアレは気にしなくなってくるよね」
そうか。歳を取るってこういうことなのか。気にならなくなるのか。
なんて思ってまたパソコンに集中する。
しかし、しばらくして、ワタリの集中を遮る言葉が入ってきた。
「女房がいなくて寂しいよ」
ピクン。
手が止まる。耳が研ぎ澄まされる。
聞いてきくと、おじさんAの奥さんが去年他界されたようだった。
さっきの「まどか、かわいい!」って言っていた雰囲気はなくなり、神妙な空気がワタリのテーブルにまで流れていた。
おじさんA「子供がいたってねどうにもならないよ。冷たい女房でもね。いるとね、何か空気みたいなんかな。そういうのが回ってるんだよ。1人だとね、なんで生きているんだろう?って思うよ」
誰が夕方のタリーズでこんな話を聞けると思うのか。もう完全に引き込まれる。
しばらくして、他の1人が口を開いた。
おじさんB「大丈夫だよ。うちらがいるから」
もうワタリ。同席したい。全力で話聞きたい。その衝動を必死におさえる。
したら
おじさんA「いやいやまぁね」
なんて少しかわす。
そしたらおじさんCが口を開く。
おじさんC「あんなに広い部屋だもんね。部屋4つあるんだっけ。そら寂しくなるよ。息子さん戻ってくる予定ないんだっけ?」
おじさんA「ない。また、俺、息子の女房嫌いだからね。いるとね余計に気を使う。来るくらいだったらそん時は家売って施設入るかな!はははは!」
おじさんC「そうか〜」
おじさんA「うん。でもね、こんな事言うとアレだけどさ、正直ね、女房が家好きだったんだ。好きな家を売るってのもね。。」
またBが
おじさんB「こういっちゃ失礼だけどさ、昔の奥さんのことアレするよりさ、現状のことを大事にしないと。ね。思い出だけじゃ生きていけないよ」
おじさんC「おい。言い過ぎだよ。な。ははは」
なんだろう・・。
なんていうドラマに立ち会っているんだろう。
またBが続ける。
おじさんB「健康のことを考えてね。こうやって3人会やってるんだからさ!」
そしたら
おじさんA「おれ、それだけが楽しみでいるんだよ」
ああ、もう泣きたい。「3人会!最高っす!」っていいたい。
おじさんA「でもさ。お二方ももしそうなったらそう思うと思うよ」
おじさんB「まぁ・・・そうね」
おじさんC「んん・・・俺はないわ!はははは」
その笑い声につられて3人が笑う。
ああ、友情。素晴らしいね。
と、思ったら、急にCが笑うのをやめて
「(息を殺しながら)おい!!」
と、残りの2人にテーブルの向こうを見るように顎で指示を出す。
お店に入ってきたミニスカートの女性が3人会の近くを通り過ぎる。
3人とも黙る。
その顔は今までで一番真剣だった。
ミニスカートの後ろ姿を姿が見えなくなるまで見送る。
見送った後、3人が同じタイミングでコーヒーを飲んだ。
完璧な3人に憧れた。
ワタリのワークショップ「ワタリーショップ」は都内で定期開催。
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