窓打ちズズメ

香川で上演する芝居の稽古のため。四国学院大学へ。学校内にある宿舎にて泊まり込み。

ワタリが泊まる部屋は3階。エレベーターで向かい、空いた途端に驚いた。

雀が飛んでいた。ロビーに雀が迷い込んでいた。

外に出たくて、何度も窓にぶつかっていた。

「駄目だよ!こっち!こっち!」

と、窓を開けてワタリが何度呼びかけても、反対方向にある開かない窓に体当たりする。

途中、脳震盪を起こしたのか、ソファでひっくり返った状態になった。

ワタリは「捕まえて外に出してやろう」と思った。でも次の瞬間。

雀··ばっちぃかも···

なんて思いがやってきた。なんてこった。ジブリ映画のどんな人物だって両手で救ってやるだろうに、なんでお前はそんな潔癖な思考を持つんだ?

なんでジブリ映画の人物を引き合いに出したのかわかりませんが、助けたい気持ちと自分の潔癖との間で葛藤した2秒後、意を決して手に持っていた財布でツンツンと突っついた。

雀は目覚めて飛び始め、また同じ窓から出ようと頭をゴンゴン。

なんで!!なんでその窓なのさ!?

なんて思った次の瞬間

窓の向こう、もう1羽の雀が!

明らかに助けに来たように飛んでいる。

その雀をみて、中にいる雀がまた勢いよく飛び始め、その雀に向かっていく。でも窓にあたる。ゴンゴンゴン。

ドラマや···ドラマや~!!

なんて感動するワタリ。

いや、でもさ、雀はそんなこと思ってないでしょ?それは人間の勝手なんじゃないの?でもこんなに関係している繋がっていると感じる。だって雀だって集団で生きる生き物。繋がっているのは当たり前やんね、なんてこと考えてないでなんとかしよう!!

急いで1階に行き、事務の方に話をして、一緒に救出作業。

雀が体当たりをしている窓は、排煙窓。

「初めて押します」と言いながら事務の方が排煙スイッチを押す。

ゆっくりと窓が開いた。

それにびっくりして、通路の奥に雀が逃げた。

「だから違うって~!」

っとワタリが向かうと、雀はワタリから逃げて、排煙窓のほうからスィ~ッと飛んでった。

「あ~良かった」

「良かったですね~」

排煙窓を閉めて、一件落着。

事務の方と、なんだか仲良くなった気がした。

たくさんぶつかった雀。どこかで休めると良いな。

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