「ひとり即興芝居って、どんなもの?」
もしイメージが湧かない方がいたら、まずはこちらの動画をご覧ください。
ワタリが、脚本も打ち合わせも一切なしの「ひとり即興芝居LIVE『ヒトリワタリ』」を始めて、もう12年になります。最初はただただ必死。しかし3回目くらいから「これは、やり続けるべき表現だ」と確信しました。
月イチ開催を41回続けた後、地方公演へと活動の場を広げていく中で、観てくださった方からの感想が、少しずつ変わってきたことに気づきました。
当初多かった「即興すごい!」「伏線回収が面白い!」といった声に加えて、
* 「そのままで良いと言われている気がした」
* 「たくさんの人の人生を感じられて涙が出た」
* 「自分は、自信をもって、そのものを置いていっていいんだな、と勇気をもらった」
といった、観客自身の内面に深く響くような感想が増えていきました。
なぜ、ヒトリワタリは、そんな風に人の心を揺さぶるのだろう?
自分でやってるのに良くわかっていない、このヒトリワタリという表現。
即興中はとにかく無我夢中。だからこそ、言葉にしてみよう。
ということで深掘ってみました。
独りだからこそ「ゆだねる」「手放す」「任せる」。それが観客を勇気づける理由
ヒトリワタリは、読んで字のごとく「独り」です。助けてくれる仲間はいません。頼れるのは自分だけ…と思いきや、それだけではすぐに限界が来ます。
「俺が!俺が!」というエゴや、自分の引き出しだけで勝負していては、面白いものは生まれないし、そもそも続ける意味すらないとワタリは思います。
僕がヒトリワタリに強く惹かれ、続けている理由は、\*\*「独りの即興だからこそ、『ゆだねる』こと、『手放す』ことが、何よりも重要になる」\*\*と気づいたからです。
だから、ヒトリワタリのスローガンはこうなりました。
「自分の能力の最果ては?自分を、人を、空間全部を徹底的に信じた先にどんな世界があるのか?」
頭で「次はこうしよう」と考えていては、その場の空気や観客のエネルギーに追いつけません。だから、自分を可能な限り「自然体」にする。思考を手放し、ただ「その場にいる」。
そうすることで初めて、観客の息遣いを感じ、空間の雰囲気を味わうことができる。感じられるから、反応できる。反応するから、芝居になっていく。
その積み重ねによって、そこに予期せぬ物語が立ち上がってきます。
子どもが無邪気に遊ぶように、自分自身を遊ばせて、大人の自分が遊んだ跡をつなぎ合わせる。
この状態は、「どうだ!面白いだろう!」というエゴが主役では、決して辿り着けません。
僕の好きな野口体操の野口三千三先生の言葉に「負けて参って任せて待つ」というものがあります。これは、まさにインプロの原理原則だと感じています。
インプロは「負けの美学」。
コントロールを手放し、完全に「参った!」と降参したときにやってくる、しなやかな強さを知れるのです。
つまり、ヒトリワタリの舞台上で、僕が目指しているのは、
「手放しで、自然体で、素直」
な状態です。大人になるほど難しくなる、このあり方。
そんな姿を、観客の皆さんは無意識に感じ取り、ご自身の「素直な部分」と共鳴しているのではないか?
そして、その「素直な自分」から衝動的に生まれてきた言葉や動きを、僕自身が「それじゃダメだ!」と否定せず、「それが出たなら、こうだ!」と必死に受け入れ、肯定し、物語を進ませていく様。
時には、それがとんでもなく大変な展開を招くこともあります。
楽しいだけでなく、悲しい物語になることがある。
でも、それも人生の面白さであり、美しさだと思うのです。
登場人物たちの全ての感情が、ただただ愛おしい。
この「自分から出てきたもの全てを、全力で肯定する」ヒトリワタリのプロセスそのものが、「そのままで良いんだよ」というメッセージとして、観ている人を勇気づけているのかもしれない。 そうだったら、これほど嬉しいことはありません。
「愛と勇気と遊び心」で踏み出す。渡猛がインプロで届けたいもの
手放しで、素直で、自然体。
そんなあり方を、舞台上で体現できているか? それを誤魔化すことなくダイレクトに突きつけられるのが、ヒトリワタリという表現です。
「負けて参って任せて待つ」状態に入れた時、自分が自然に動き出し、自分でも予期せぬ言葉を発し、時には観客の想いがシンクロするように表現に現れることがあります。
独りであって、独りじゃない。
そんな不思議な感覚に包まれます。(※この感覚については、また別の記事で詳しく書きたいと思います!)
その境地に辿り着くためには、不安や恐れすら包み込む愛情を持ち続ける必要があります。
だから「愛と勇気と遊び心をもって、一歩踏み出せる」
これなくして、観客と繋がり、共に世界を創造していくようなライブは生まれません。
ワタリ自身、そんな表現者であり続けたいし、ワタリのインプロを通して、観てくれたあなたが、ほんの少しでも「愛と勇気と遊び心」を持って、日常の一歩を踏み出せるようになったら…それが、ワタリがインプロを続ける一番の理由なのかもしれません。
(あとはワタリ自身の健康と生命維持のため、という現実的な理由もありますけどね!笑)
根底にあるのは、やっぱり**「人間って面白い!」**という尽きない好奇心です。
もし、この話に少しでも「面白そう!」「観てみたい!」あるいは「ワタリの健康のために!」(笑) と思ってくれたなら、ぜひ一度、ヒトリワタリを目撃しに来てください。
最新のヒトリワタリの情報は、Webサイトのトップページか、以下のチケットサイトでご確認ください。
https://wataribouya.stores.jp
会場でお会いできるのを楽しみにしています!
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