マツリワタリ終了後に現れたアラン・ドロンと無垢なバッタ取り

マツリワタリ、1日3ステージ×2日間の全6ステージが終わった。
最後の公演はラストスパート。とにかく全力。「あとにもう何も残さないように!」っていうのもあって、終わったあとはフラフラ。

でもそれで終わりなわけがない。バラシがある。
機材やらなんやらの撤収。
劇場のモップがけ。
感謝の気持ちを込めてやるモップがけがわりと好き。
スタッフ含めて皆でやっているし、そもそもセットも組んでいないのであっという間に終わる。
「・・夢のようだな」公演が終わる時に毎回思う。

もろもろ一段落して、あとは各自の荷物をもって出る段階になって、ようやっと気持ちが落ち着いてきた。
手洗い場で手を洗う。
1人でやると決めて、そこからの怒涛の毎日。たくさんの人たちの応援。
そして2日間の公演。
本当に有り難いなぁ。そして頑張ったなぁ。なんて思いながら手を洗う。
熱冷めやらない身体に冷たい水が心地よい。
顔をあげると壁に鏡がかけてあって、自分の顔がうつった。

「・・きれいだ」

これが挑戦した漢の顔か。なんて澄んだ瞳なんだ。ますます男ぶりがあがったんじゃないか。誰かに似てる・・アランだ。アラン・ドロンだ。太陽がいっぱいだ。なんて自分で自分のことを褒め讃えたその時

「うわ~めっちゃ鏡みとる!ナルシストじゃね~~!!!」

その声はアトリエ第Q藝術全体に響き渡った。声の持ち主はスタッフでありワタリの妻であるツマミちゃんだった。※後日わかった話、この時ツマミちゃんはワタリがわざとナルシストのフリをして遊んでいると思ったらしい。だがこの時のワタリは知る由もない

心臓が止まるほどびっくりした。いや止めたいのは時間だった。

まさか、自分に悦に浸っている瞬間を見られるなんて。そうかここはトイレでも風呂場でもなくアトリエ第Q藝術だった。でもまさかここで、この音量で指摘されるなんて誰が想像したでしょう。完全に不意を突かれた。心臓がとまったワタリはリアクションが取れずまだアラン・ドロンのまま鏡を見つめるしかなかった。

「まだ見とんね!?キモ〜ッ!w」

第2波がきた。
いかん。何か反応しないと。でもどうやって?なんということでしょう。
さっきまで6ステージ完全即興で芝居していた人間が、リアクションができない・・だと?そんな馬鹿な。なにか反応しないと何か!
必死に視線を鏡からずらし

ワタリ「・・見てないし」

出てきたセリフにびっくりした。0点だ。あれだけ相手を肯定するとか、違和感なくその場にいるとかやってきた人間が。視線を鏡からはずし否定するしかできない。
その瞬間に記憶がフラッシュバックした。

小学生の時にコロンとう○こを漏らした。コロンとなるほどに硬いやつだ。
どうしていいかわからず、さっとトイレにいって、コロンう○こを便器に投げた。そのあと何事もなかったかのように教室に帰った。
そしたら、なぜか上級生2人がクラスに入ってきた。ワタリの前に立って

「お前、う○こ漏らしたやろ」

と言われた。え?お前誰だよ?で、なんで知ってるんだよ?なんで?
パニくったワタリが出したセリフは

「・・漏らしてないし」

だった。その後どうなったのか思い出せない。帰ったのかな。なんだっけ?

「見とったじゃん!ナルちゃんじゃね~!」

ツマミちゃんの第3波によってまたアトリエ第Q藝術に戻ってこれた。
彼女の後ろにもスタッフがいてクスクス笑っている。
全公演スイッチャーしたツマミゃんも疲れ果てて、無垢モードに突入しているのだろう。
「あ!バッタ!」「あ、セミ!」と同じ感覚で「あ!ナルシスト!」っていってるのがわかる。悪意がまったくない。ワタリは最後のチカラを振り絞り

「かっこいいな~って思ってさ」

ようやっと乗った。でも遅い。第3波のあとに乗るなんて遅すぎる。
鏡にうつったワタリを見た。アラン・ドロンはいなかった。
即興って・・難しいっす。

「ありがとうございました!」

劇場に頭をさげた。
謙虚に。また1からスタートだ。

調子に乗ると1に戻してくれる神様。ありがとう。

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