祭りのあと、静かな朝に思うこと
少年野球の声援と、風の音。
窓から見える桜の木はもう青々としている。
穏やかな朝が能楽堂でのヒトリワタリを終えた身体に沁み込んでくる。
脳はまだボーッとしてる。
ただ胸の中にはいろんな感情がうずまいているし、頭の奥には言語化したいモロモロがあるのがわかる。
さて昨日の特別な一日を反芻する。
能楽堂という「場」で、生まれた即興
「うっわぁ…」
下見で足を踏み入れた瞬間に漏れた声。あの神聖な空気、研ぎ澄まされた静寂。
それにプラスして、流れているのは虫の音。
照明も抑え気味。
都会の喧騒が嘘みたいな空間に、入ってくるお客さんは驚いたりワクワクしたりしていた。
しかし、はしゃぐ感じでは、ない。
むしろ小声になる。
瞑想するにはもってこいの環境だ。
お芝居を見るような「かしこまった」感じにさせない、ブーイングも笑いもどうぞ遠慮なく!っていうのがワタリたちがやるインプロLIVEの空気感。
そのちょうど反対側に位置するような空間w
「これはやりづらくなるかな・・」と思ったが、全然そんなことはなかった。
それはみんながただ静かにいるのではなく、ワクワクしてる感じが伝わってきたからだと思う。
「あの・・見てる時は瞑想状態でいないでね」なんて前説で言ってみる。
そこでお客さんが笑う。その笑い声が能楽堂に響いた。
そこで「大丈夫」と確信した。
そしてワタリ自身、本番が近づくにつれ、自然と瞑想的な状態になっていくのを感じた。
もっと緊張してソワソワするかと思った。
それがほぼなかったのは、能楽堂という「場」がそうさせたのかもしれない。
前説がおわり、一度舞台袖にはける。
そこからいつもの出囃子(原田茶飯事氏のヴァンサンカン)が大きな音で流れる。
緞帳があいて、橋掛かりを一歩一歩進み、舞台へ。
不思議にその橋掛かりを歩いてステージに向かう様が、ワタリがインプロと出会い、歩んできた道のりのようにも感じられた。
そして始まった、70分超の即興の旅。
生まれたシーンは6つ。
「そんなに怒らないでよ」「メンコ少年、ライバル現る」「即興らくご-笑顔」「フォルダにいれるなよ!レジ割りこまれた男」「沈黙からの即興ー電球との別れ」「怪しいカバンには気をつけろ」…
言葉で内容を再現するのは、海水を洗面器ですくうようなものだから、ここではしない。(※きっと動画で出します)
ただ、ワタリ個人としてどうだったか?というと、とにかく楽しかった!
あの空間で、集まってくれた皆さんと一緒に創り上げた時間は、間違いなく、ものすごく嬉しくて、尊いものだった。
喜びと、悔しさと、消えない葛藤
終演後、主催のコウキさんが言ってくれた言葉が、胸にしみた。
「めっちゃくちゃ面白かった!ワタリさん、もっと有名になってくださいよ。こんなに面白いのにおかしいよ。絶対にいけるから」
嬉しい。心の底から嬉しい。
でも、同時に悔しい。
これだけ「面白い」と言ってもらえるものを創っている自負がある。28年間、磨き続けてきた。
なのに、なぜ届かないんだろう?
インプロをやっている人にすら、この特別な公演の情報は届ききらなかった。目標の集客には、まだ足りなかった。
ここまで心血を注いで創り上げた道も、表現も、人に届かなければ、需要がなければ成立しない。
心と身体は連動している。気持ちが削れて、いつか終わりを迎えてしまうのかもしれない…。
そんな無力感や焦りが、何度も心をよぎる。今回も、「もうやめようか」と、正直、思った。
「やめたって、誰も困らないよ」
そんな意地悪で、でも真実かもしれない声が、自分の中から聞こえてくる。
それでも、ワタリがまだ「やめへんでー!」と続ける理由
でも、その声と付き合いながら、同時に思うんです。
「いや、まだだ」と。
まだ、やれていないことがある。やりたいことがある。それは、”やりきれていない”ということだ。
僕がインプロを通して届けたいもの。「愛と勇気と遊び心」「人間って面白い!」という感覚。それを、もっと多くの人に、もっと深く、届けられるはずだ。そのための方法を、まだ試しきれていない。
能楽堂という「場所の力」も、今回改めて知った。知識では知っていたけど実感した。これも大きなヒントだ。
「ホーム」での濃密な時間と、「ハレの場」での新しい出会い。この両輪を回していくことで、見える景色が変わるかもしれない。
SNSの届け方についてもやり切れていない。
だから、もう少しだけ、足掻いてみようと思う。
自分の可能性を、インプロの可能性を、信じてもがいてみようと思う。
今年いっぱい…いや、分からないけど、「やりきった!」と心から思えるその日まで。
最後に。
今回、能楽堂に来てくださった40名の皆さん、そして「行きたい!」と気持ちを届けてくれた皆さん、本当に、本当にありがとうございました。皆さんの存在が、僕がまた一歩を踏み出すための、何よりの力になります。
いつも励まし、たくさんの業務をとんでもない明るさでこなしてくれる永田マミ氏。
今回もワタリの即興をより深いところまで広げてくれた即興ピアノのコニタン。
一緒にヒトリワタリを盛り上げた歴史をもつカメラマン會田くん。
いろんなやり方でワタリをサポートしてくれたマツリメンバー。
感謝しています。本当にありがとう。
そしてこのブログを読んでくれているあなたへ。
もし、このブログを読んで、少しでも何かを感じてくれたなら、ぜひ一度、僕のワークショップやライブに遊びに来てください。一緒に「面白い!」を探究しましょう。
ワークショップ情報はこちら→https://watari-bouya.com/impro-workshop-6/
LIVE情報はこちら→https://watari-bouya.com/
photo by Mami Nagata



















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